1950年代のパテック・フィリップ Ref.96が入荷致しました。
パテック・フィリップ Ref.96のご紹介。
イエローゴールドのケースにシルバーのダイヤル。針はドルフィン、インデックスは砲弾型。様々なデザイン・マテリアルで造られたRef.96ですが、カラトラバと聞いてだれもが思い浮かべるのはきっとこのデザイン、このスタイル。
Ref.96よりも以前に腕時計は勿論存在しているわけですが、腕時計を腕時計たらめした”腕時計のオリジン”といっても過言ではない、美しさと頑強さを兼ね備えたケースデザインを持つRef.96は腕時計開発史におけるマスターピース。これに異論を挟む者はいないことでしょう。
今回の個体はケースはややポリッシュされてはおりますが、文字盤はかなり綺麗で全体的な雰囲気も非常に良いです。ロゴのエナメルの立体感もばっちりです。
賭けても良いです。このドルフィン針と砲弾インデックスの96、仮にどれだけ他のデザインの96を持っていても結局は欲しくなります(私がそうです)。
色々理由はありますが、やはりこのドルフィン針の厚み・立体感でしょうか。一応私も時計屋になってもうすぐ8年目になるのですが、ドルフィン針に関してはヴィンテージパテックに比類するものが未だに見つかりません。
分厚いだけの針なら他にもあるし、ドレッシーな雰囲気の針ならドルフィン針以外でも良いわけですが、この一見武骨さすら感じるデザインと造形でありながら、エレガントな雰囲気も兼ね備えたドルフィン針はやはりヴィンテージパテックが至高。
ハカマ周辺の佇まいも良いんですよ。これだけ分厚い針を2本も使っているにも関わらず、クリアランスはギリギリまで詰められている。巧みに組み合わされた建築物の一部の様な端正さ。それらがこの僅か30.5mmのケースに収まることで生じる凝縮感、これは96ならではの佇まいだと思うわけです。
ムーブメントはCal.12-400を搭載。これまた良い機械です。個人的には96なら欲を言えば12-400搭載機が欲しい。稀少性で言えばアンチマグネティックの27-400AMの方が上なのですが、私としてはテンプはチラネジが好みですし、耐震装置や地板・プレート外周の面取り等クラシカルな意匠はそのままに改良を加えられた古き良き時代のムーブメントという感じです。これらの改良によって様々な形状のケースに収める事が出来るようになり、パテック・フィリップのウォッチデザインの幅を大きく広げることにも一役買った銘機なのです。
腕乗りです。勿論良いですよ。
ケースサイドの金錆も良い風合い。ヴィンテージらしさが引き立ちます。
とても30.5mmとは思えないくらい迫力と存在感を感じます。
アーカイブは取得済み。1955年製造の個体です。
最後は昨日投稿した18KPGのRef.96と2ショットで。
Ref.96が同時に2本以上在庫があるのは私がアンティークの部署に異動になった直後以来、おおよそ6年振りでしょうか。昔はRef.96ならばマテリアルやデザイン違いの個体を複数並べて選べたらしいのですが、私からするととんでもなく贅沢で羨ましい話です。
現代ではより一期一会な感が強いヴィンテージパテック。かなり神経を張り巡らして探さないと中々良い出会いには恵まれないのが悩ましいのですが、その分渾身の一本を手にした時の喜びはひとしおです。今回の96も勿論お客様優先ですので私は手にすることは出来ませんが、いつか私も手に入れる予定です。道のりは険しいですがヴィンテージパテックに関心を持って頂いているお客様、共に頑張りましょう(笑)
当店にお越しの際は是非お手に取ってお楽しみください。
銀座店 中野