いつもシェルマン銀座店 ichigo_ichieブログをご覧頂きありがとうございます。
ブログをリニューアルしてから約1年以上経ち、私自身もアンティークウォッチに触れ初めてようやく1年が過ぎました。
私は元々時計が好きで、現行の時計は色々と見てきたつもりではありましたが、配属当初はアンティークウォッチの魅力や造りの良さ等が良く分かりませんでした。
そんな私が自分自身でヴィンテージパテックを買うまでに至ったこのアンティークウォッチの世界の面白さを、コラムという形で少しずつ書いていきたいと思います。
堅苦しくて高尚な内容よりも、これから初めてアンティークウォッチに触れる方、アンティークウォッチに興味がある方と一緒に楽しんでいきたいなと考えています。
第一回目は、なぜ、カラトラバは高く評価されているのか?という事を書いていきます。
カラトラバとは現代ではパテック・フィリップのドレスウォッチ全般を指すシリーズ名として使われています。
一般的にカラトラバという呼称が使われ始めたのは80年代頃からで、それまでは社内的な用語として使われていたという説もあります。
しかし、ヴィンテージパテックの世界ではドレスウォッチ全てを指すものではなく、
1932年に登場したRef.96(クンロク)を代表とするラグからリューズにかけての流麗なケースラインと、フラットで幅広のベゼルとの組み合わせが生み出すフォルムを「カラトラバケース」と呼んでいます。
Ref.96以外にもカラトラバケースをもつモデルは複数存在します。
近年人気が高騰しているビッグカラトラバRef.570(ケースサイズ35mm)。
Ref.96よりも更に小ぶりで文字盤の凝縮感が魅力なベビーカラトラバRef.448(ケースサイズ28mm)。
生産数が非常に少ない自動巻ムーブメントを搭載したカラトラバオートRef.3403、Ref.3438、Ref.3439。
2ピースケース+スクリューバックの防水仕様のRef.2545、Ref.2555(センターセコンド)、Ref.438(28mm)。
Ref.2451(ケースサイズ約31mm)とRef.2509(ケースサイズ35mm)等はダストカバー付きの防水ケースに傾斜ベゼルの組み合わせの為、厳密にはカラトラバではないという見方もありますが、Ref.96同様のケースラインは間違いなくカラトラバからのデザインの系譜と言えるでしょう。
文字盤のデザインも王道のドルフィン針と砲弾型インデックスの組み合わせ以外に、ブレゲ数字や夜光インデックス、世界的に高騰しているセクターダイヤル等、そのバリエーションは無数に存在します。
更にケース素材も定番のイエローゴールド以外に、ピンクゴールド、ホワイトゴールド、プラチナやステンレススチール等が在り、同じリファレンスであっても文字盤との組み合わせ次第で全く違う時計に見えるほどです。
ヴィンテージパテック愛好家のお客様の中には、リファレンスだけでなく素材と文字盤の組み合わせまでご指名されて、憧れの一本を何年も探し求めている方もいらっしゃいます。
そうした多くのバリエーションが存在するカラトラバですが、懐中時計にラグや管を溶接したようなデザインの時計が多かった1930年代において、Ref.96のカラトラバケースは非常にエポックメイキングなデザインでした。
デザインの美しさもさることながら、ケースと一体成型のラグは30.5mmのケースサイズに対して18mmというかなり太い幅のベルトを付けてもしっかりと保持できる耐久性も兼ね備えていたからです。
長期間使用することでラグが歪んでしまうような従来の腕時計の問題点を克服しつつ、誰が見ても美しいと感じるデザインを持つカラトラバケースは、
その後の時計デザインの歴史において多大なる影響を与え、腕時計の誕生から100年以上経つ現代においてもその影響を受けてない時計は無いと言っても過言ではないでしょう。
この完璧なデザインと機能美の融合が、80年近い時を経てもなお時計愛好家の心を掴んで放さないカラトラバの魅力であり、高く評価されている理由なのです。
By T.N
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※コラム第二弾 ”【ヴィンテージパテック入門】Ref.96だけが最初の一本に相応しいのか?” はこちら。