1930年代のパテック・フィリップ Ref.96が入荷致しました。
久しぶりのパテックの96ですが、今日のはかなり凄いです。
文字盤の色味はシャンパンとアイボリーを足したような優し気な雰囲気。雰囲気を壊す様な過度な汚れや傷はありません。
デザイン自体はかなりシンプルで、リーフハンドに12・3・9の飛びアラの組み合わせは華やかさよりも実用性を感じさせるデザイン。そして外周のレイルウェイトラックが文字盤全体を手堅く引き締めてくれているわけですが、これらの組み合わせは我々も今までに見た記憶が有りません(12・3・9にパールドットならばそこそこ見かけます)。96ならばセクターダイヤルやブラックダイヤル以上にレアな一品かと思います。
この時計のデザインを見て、個人的には”時計好きが好きな時計”と言った印象を受けます。当時のパテックの価格帯や客層を考えれば正直地味過ぎる気もするわけですが、この時計を購入された方はもしかしたら時計に対して並々ならぬ拘りを持った方だったのかもしれません。だとすればかなり”解っている人”だったのでしょうね。現代の”時計好き”としてはそのチョイス、かなりグッときます。もし現代に生きていたら、さぞ時計談議に花を咲かせられたことと思います。
アーカイブは取得済みで1939年製造の個体です。
ムーブメントは手巻きのCal.12-120を搭載。美しい仕上げも健在。
ケースのコンディションも中々で、80年以上前の個体であることを考えれば申し分のない状態です。
ケースサイズは30.5mm。腕乗り、良いに決まってます(笑)
日々お客様のご対応をさせて頂く中で、Ref.96ほど腕に乗せると意外に存在感があると驚かれる時計もありません。
ケース径30.5mmという小振りなケース径でありながらも、幅広でエッジの立ったベゼルや、サイドを絞らない分厚く見えるミドルケース等、ドレスウォッチのセオリーからは敢えて外れたデザインが生み出す唯一無二のシルエットは想像以上にマッシブな造形なんです。その上で3ピース構造故のミドルケースの美しいケースサイドのラインが、ちゃんとドレスウォッチとしての佇まいも持ち合わせているのです。
やはりドレスウォッチは、96は奥が深い。
今日のラストは針で締めます。
針好き、特にリーフ針好きを公言している私ではありますが、リーフ針はやはりヴィンテージのパテックが最高です。短針のハカマ周辺を見て頂くとお判り頂けるかと思いますが、細く繊細な印象を受けることの多いリーフ針でありながらかなりの厚みを持って成型されていることが解ります。
その針を職人が手で更に形を整えることで、美しい曲線美がもたらされるのです。恐らく光の反射による輝きさえも計算に入れた造形、なんとも美しいじゃあないですか。これはいつまでも見ていられます。
非常に希少なデザインのパテック・フィリップ Ref.96、当店にお越しの際は是非お手に取ってお楽しみください。
銀座店 中野