稀少な1970年代のカルティエ タンク・オートマチックが入荷致しました。
久方ぶりのタンクLCですが、今回のは超スペシャルです。今日はちょっと長い話になりそうです。
ぱっと見のサイズは手巻きのタンク・ルイ・カルティエにしか見えませんが、実はこれオートマチックモデルです。カルティエに詳しい方なら、「それだとRef.17011かな」と思うかもしれませんが、でもこれRef.17002なんです。
ややこしい話なので一旦整理しますと、70年代のタンク・ルイ・カルティエ・オートマチックは大きく分けて2種類あります。
一つがRef.17002で、通称ジャンボと呼ばれるモデルです。ケースサイズが約35mm×約28mmというビッグサイズが特徴です。
もう一つが一回り小さいサイズのRef.17011。こちらは手巻のタンクLCに近いフォルムでケースサイズは約33.5mm×約25.5 mmです。
どちらのモデルもオートマチックムーブメントを使用するため、通常のタンクの様なフラットな裏蓋ではなく、裏蓋中央が膨らんだ独特なフォルムを持ち合わせています。
というわけで縦横比的に私も最初はRef.17011かなぁと思ったわけですが、そんな簡単な代物では無かったのです。
驚くべきことに、裏蓋が膨らみのないフラットな仕様となっています。その上、裏ブタにはRef.17002の表記とオートマチックの刻印が入っています。
というわけでフラットな裏蓋のタンクオート、結果的にケースの厚みは通常のタンクの厚みを遥かに凌駕しています。通常タンクLCの厚みはリューズと同じ程度なのですが、今回のタンクは圧倒的な分厚さを持ち合わせています。タンクLCエクストラフラットの倍くらいはあるかもしれません。
ダメ押しの確証を得るために今回はカルティエにて事前にメンテナンスを行っています。
一応ご説明させて頂くとこの時代のカルティエのシリアルは前5桁がリファレンス、以降が固有の製造番号となります。よって御覧の通りRef.17002であり、製造番号も極初期の個体(30番前後です)であることがお分かり頂けるかと思います。
ここからは私の推測ですが、今回のタンクLC・オートマチックはRef.17002の初期モデルで短期間のみ製造された、”Ref17002 アーリーモデル”と呼べるものと思われます。その後恐らくカルティエがデザインの見直し等を行い、Ref.17002はジャンボへ、その派生モデルとしてRef.17011が誕生したのだと思います。
個人的にはRef.17002アーリーのモデルチェンジとしてはRef.17011のサイズの方が自然に感じますが、きっと裏蓋の形状を変えるにあたって最初はある程度のサイズアップ、ジャンボサイズのケースで設計する必要があったのでしょう。その後ノウハウの蓄積によりサイズダウンしたRef.17011が誕生したのかもしれません。
因みにご安心下さい。今回のメンテナンスで外装の磨きやパーツ交換は行っていません。入荷時にケースサイドに2か所深めの傷があるので一瞬悩みましたが、この稀少なケースのフォルムは崩すわけにはいきません。
18KYG製の純正Dバックルにはカルティエのロゴが刻印されています。
さて私もお待ちかねの腕乗りです。ケースサイズは縦約30.5mm(ラグ含む)×横約23mm。よく見れば手巻のタンクLCとは若干印象が異なりますね。やや横に幅広な感じがあります。
そして本題とも言えるケースの厚み。これは凄いですね。普段イメージするタンクLCとは全く異なるケースライン。エレガントの象徴とさえ言えるタンクLCでありながら、このマッシブさと愛嬌を兼ね備えたコロンとした佇まいが無性に愛らしく感じます。
これも私の推測ですが、恐らくカルティエはこの厚みのあるケースラインを良しとせず、通常のタンクのエレガントなケースラインに近づける為に後年のジャンボ等の様な膨らんだケースバックを用いる事にしたのではないでしょうか。個人的にはこの厚みを持ったフォルムも面白いと思うのですがね。70年代の「ドレスウォッチといえば薄型」という流行を鑑みれば理に適った変更でしょう。
PARIS表記の文字盤は、クラックは勿論、傷や汚れも見受けられない非常に美しい状態を保っています。
以上、カルティエ タンク・ルイ・カルティエ Ref.17002 アーリーモデルでした。昨今益々注目を集めるヴィンテージカルティエ、価格の高騰に私も日々頭を悩ませながら買付をしておりますが、今回のタンクはあまりのレアさに、必ず手に入れると見つけた瞬間に決意しました(笑)正直これは次回同じモデルを仕入れる自信はありません。まさに一期一会と呼ぶに相応しい一本です。是非お見逃しなく。
当店にお越しの際は是非お手に取ってお楽しみください。
銀座店 中野