皆さまこんにちは。ウォッチリペアコーナーの狩野です。
故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る、温故知新のコーナーです。
さて2024年7月3日に新紙幣が発行されたのは記憶に新しいところですが、その新紙幣の1万円札の肖像には「渋沢栄一」が採用されています。
彼はウォルサムの懐中時計を愛用しており、それがウォルサムの「プレミア・マキシマ」です。このプレミア・マキシマは当時最高の技術を用い、厳格な管理体制のもと製造されていました。
この時計を渋沢栄一が入手したきっかけは、1921年にワシントン軍縮会議実況視察のため渡米した折、百貨店王のジョン・ワナメーカーから贈られたようです。
実際、渋沢栄一記念館に保管されているプレミア・マキシマの内蓋(ダストカバー)には、1921年12月5日にジョン・ワナメーカーから贈られた旨の以下の刻印があります。
「Token of affection to Viscount Shibusawa From John Wanamaker usa December 5 1921」
※渋沢子爵へ愛情の証、ジョン・ワナメーカーよりー1921年12月5日
ちょうどこの時、渋沢栄一は12月3日にワシントンを出てフィラデルフィアのジョン・ワナメーカーの自宅に1泊し(その他旅館に1泊)、12月5日に再びワシントンへ戻っています。
つまりもしかすると、12月5日のワシントンへ戻る前にワナメーカー宅を訪れ、「これからワシントンに戻るね、ありがとう」と挨拶に行ったその時に贈られたのでは?
などと想像が膨らんでしまうのですが、こういうバックストーリーを調べたり想像を巡らせたりすると、ウォルサムのプレミア・マキシマが当時非常に特別な逸品として扱われていたと分かります。
同型のものであれば実はシェルマン銀座本店にもございますので(2024.11月現在)、ご興味ございましたら2階ウォッチリペアコーナーの狩野か店頭スタッフにお声かけください。
個人的に私がこの時計で特に魅力的に感じるのは時分針です。動画でもご紹介しておりますが、センターから針先まで太さの変化に富んでおり、細いながらも存在感抜群です。時計好きであれば一度は見るべきレベルの針です!
以上、今回は渋沢栄一のウォルサム「プレミア・マキシマ」を調べてみました。
皆さんもお持ちの時計のバックストーリーを調べてみてください。ブランドヒストリーでも、その型式が作られた経緯でも、あるいは時代背景や、有名人が同型のものを身に着けていたなど、こういったことが分かるとより愛情をもって「所有する喜びや楽しさ」を感じることができますよ!